随書作主(19)

珠光方寸庵

仁 恕

忙中閑あり、 湯立ちおさえて一服の茶  

 歳暮の茶会 ぬ くもりの茶碗(仁恕)  

  ◎茶の湯に縁の深い京都柴野大徳寺の開創、大燈国師の遺誠の中に『光陰箭の如し、つつしんで雑用心することなかれ。看取せよ、看取せよ』と求道者に対しての厳しい戒めの言葉が見える。私も少年期に大徳寺に毎冬参禅し、暮の大掃除に汗したが、終わりに老師からこの言葉を受けた。 ◎光とは日のこと。陰とは月のこと。月日を指す。箭の如しとは弓から放たれた矢ということで歳月の過ぎてゆく速さを説いている。臘月まさに時は人を待たずであり、禅語の中の「看々臘月尽」とは、さあ十二月だ、ぐずぐずすれば命なしと修行者を叱咤した。雑用心することなかれとは、いらぬ ことをつべこべ考えず、己の足元を看よ、真実の自分を見逃すなと戒めている。

 名の高き  茶入れもみたり年の暮

◎京阪地方では、13日を事始と称して正月の準備に入る。商家や花柳界では衣服を改め主家への鏡餅を持参して一年の恩恵に感謝する。しかし忙中閑のひととき。20日を過ぎると歳暮の釜となる。来去去来、光陰如矢と観じ、壺中日月長を悟もよし。

◎夜咄しの茶事は日没から始まり、暗くなる中での灯火の風情に酔う。この茶事の特長は前茶のあと初炭、懐石となり続き薄茶が約束となる。新年には目出度い道具の取り合わせとなるが、日頃使わない道具の中でも掛物は少し早目に掛け巻きグセを直すことを心得て欲しい。茶碗などの陶器は20分位 、温湯に漬けて充分に水を含ませることが肝要。

◎薄茶器もしみなどに心して布巾で拭くこと。茶人は常に釜を懸け、内々の人や常日頃交流のある人が年末に挨拶に来た時、薄茶を差し上げる。除夜釜がすむと火を絶やさない為の埋火(うずみび)をする。炉中の火を湿灰で覆い、新年の大福茶を点てる種火とする。やはり「看々臘月尽」、歳末は後始末が一番肝心の年の暮であることを先達は説いている。

船橋市民新聞 12/1発行 第26号


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