随書作主(18)

珠光方寸庵

仁 恕

釜の音に心耳を  澄ませ(11月)  

 炉心に なりぬ松風 竹の音(仁恕)  

◎霜月。文字通り冬の季に入る。床の間の会心の一軸に先達茶人は自らの魂を打ち込み、沸々と煮えたぎる釜の音に心耳を澄ませ、共に啜る一碗の茶に人の心のぬくもりを覚える炉辺の暖を実感できる冬の訪れである。

◎時は炉開き。この11月を茶の湯の世界では正月といわれ、筧の青竹、障子の張替え、畳替えと忙しい。炉開きと共に口切を行う茶人にとって心トキメク、大切な月である。口切とは5月の八十八夜に摘んだ新茶が20匁ずつ入る小袋(一袋と呼称)を入れて茶壷に納め、周囲へ薄茶となる葉茶(詰茶)をギッシリと詰め、壷の蓋をして合口に茶師の封印をしていたものを、この季節を迎えて茶家ではその茶壷の口の封印を切り、初の濃茶を点てる。これが口切である。口切には二タ通りあり茶師の封印を初めて切るのが内口切。一旦切った壷の封印は2度目から亭主の自印で封じる。この亭主印を切って3度も4度でも催されるのが単なる口切である。故に内口切に招かれる客は茶人冥利に尽き即日死んでも本望であるとさえ先達茶人は云ったという。

◎内口切りの主客ともなれば昔は裃(カミシモ)姿、昨今でも白襟紋服に十徳という茶人第一公式の礼装で行われる。

◎開炉に伴い道具も風炉から炉の道具と変わる。柄杓は皮目の方に切ってある炉用が用いられ、竹の蓋置も天節の風炉用から中節の炉用に変わる。炉の中に乾き灰を入れ、仕上げに真夏に作った湿灰を入れ、前部の欠けていない五徳を仕込み釜を懸ける。炉の釜も阿弥陀堂などの大振りなものとなる。

◎11月19日は元伯宗旦忌である。侘び茶に徹した千利休の孫、宗旦の遺徳を偲び一碗を捧げる。茶禅一味を提唱し、乞食宗旦の異名をとり乍ら、その茶名は揺るがぬものとした茶人ぶりは、景況感乏しき今、故えに学びたい。

水 屋 棚 (1)

◎……水屋流しの上には三種類、四段の棚がある。上から通り棚、桟棚(2段)茶碗棚となっている。茶碗棚は文字通り茶碗を載る棚、蓋置や共に濡れた茶器を置くので、水切用の簀の子板を棚板の間に入れる。別名簀の子棚ともいう。棚板の厚みは4分5厘(1.3 cm)、女竹を二本、二箇所に入れて持ち送り板で支える。その持ち送り板は上の桟棚をも支えている。

◎……茶碗棚は他の棚の半分の長さで左側に付く。右側半分があいている理由は窓の障子を清掃の時、外すためで真中より建具と手がかりの分だけ左に寄せる。但し茶碗棚を半分とせず、全部通して上の棚を釣り棚にした小屋のケースもある。この場合は建具を上の方に外す方法を採用しているが、先の建具を下に外す水屋棚に比べて道具をあまり置くことが出来ない。

 残る葉も 残らず散れや 梅もどき(仁恕)

 

茶室数寄屋建築監修者 商工会議所建設業部会長 小西 宗仁

船橋市民新聞 11/1発行 第25号


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